作品について。
今回ご紹介する作品は、トーベ・ヤンソンさんのたのしいムーミン一家です。
こちらは誰もが知っているであろうムーミンシリーズの中の一冊です。
ムーミンって名前と絵は知っているけど、正直どういった物語なのかいまいちわかっておりませんでした。
つい先日ムーミンバレーパークへ行き、ひどくムーミンの世界観に惚れこんでしまい、本書を手に取りました。
たのしいムーミン一家は、冬眠からさめたムーミンが黒い帽子を見つけ、それがきっかけで様々な事件が起こる…というお話です。
以前からスナフキンはめちゃくちゃイケメンなんだよな…くらいにしか思っていなかったムーミンシリーズですが、意外とダークなシーンもあり非常に楽しく読み進めることができました。
私が買ったのはこちら
新版も2019年に出てます!
中盤まではめちゃくちゃ怖い存在だと思っていた
基本的にはスナフキンが大好きなんですが、本作の推しは飛行おにというキャラクターです。
飛行おにはどういうキャラクターかをまずご説明させてください!
公式サイトの紹介文を一部抜粋してご紹介させていただきます。
人の願いをかなえることができる、不思議な力を持った魔法つかいです。黒ひょうにまたがって空を飛び、世界でいちばん大きなルビーの王さまを探しています。
飛行おに | キャラクター詳細 | ムーミン公式サイト
「人の願いをかなえることができる」
「魔法使い」
「黒ひょうにまたがって」
この短い文だけでも怖いイメージがわいてきますよね。
本作の中盤で、スナフキンが「かささぎから聞いたんだけどさ」と飛行おにについてお話しするシーンがあり、読者は怖いイメージを植え付けられてしまいます。
「その飛行おにってやつは、どんなすがたにでも身をかえることができるんだ。だから、宝物がうずまっているところなら、地の下でも、海の底へでも、もぐっていけるのさ」
(中略)
「飛行おにが、家じゅうルビーでいっぱいにしていることを、話していたんだよ。その宝石は、家の中じゅう、そこにもここにも山とつんであるし、かべにも、猛獣の目みたいに、はめこんであるんだ。
飛行おにの家には屋根がないから、家の上をとぶ雲は、ルビーの反射で、血みたいに赤くそまってしまう。あいつの目も赤くて、やみの中でも、きらきら光るんだって」
こわいこわいこわい…変身もできるんかい……
一応子供向けの作品のはずです。
僕が小学校低学年とかに読んだらちびってしまう描写です。
もちろん怖さはあるのですが、どこかミステリアスで私はこの文を読んで不思議と惹かれてしまいました。
「もしかしたら悲しいやつなのかも…」とか「なにを目的に集めているんだろうか…」など、まだ登場すらしていないのにどんどん想像力を掻き立てられます。
見た目とは裏腹に優しい心の持ち主
怖いキャラクターなんだな…という印象をしっかりと与えられ、いよいよラストシーンでムーミンたちの目の前に現れます。
ムーミンたちが持ってるお宝とか大事なものとかいろいろぶんどっていって、ムーミン一家をむちゃくちゃにしてしまうんじゃないか!?と手に汗を握って読み進めました。
ところがどっこい、めちゃくちゃ心優しいことがクライマックスでわかります!
飛行おにが、ついにルビーの王さまを発見しましたが、持ち主からは「正式にほかの人から譲り受けたものだから渡すことはできない!」と言われ、「そうか…分かった」と引き下がります。
飛行おにはため息をつきました。そして、しばらく、とても悲しそうにすわって考えこんでいましたが、さいごにいいました。
「よろしい。じゃあ、きみたちのパーティーをつづけたまえ。わしはきみたちのために、ちょっとした魔法を使って、自分をなぐさめることにしよう。そうだ、きみたちの一人一人に、一つずつ魔法をかけてあげよう。さあ、みなさん、なにかのぞみがあったらいいなさい。——そら、ムーミン家の人たちからさ」
ルビーの王さまを奪うことは飛行おににとっては造作もないことだったと思います。
しかしながら、そんな乱暴な真似はせず、ただただ落ち込むだけだったのです…!
えっ、可愛いのでは…!?
そして何よりも、自分をなぐさめるために、みんなのために魔法を使おうと提案する心の広さ、エンターテイナーです。
私が最初持っていたイメージとは正反対で、漢気・ジェントルさにほろりと涙を流さずにはいられませんでした!!!!
このあと飛行おにはどうなるのか、ぜひ本書を手に取って実際に読んでいただけたらと思います。
終わりに。
たのしいムーミン一家というタイトルですが、ところどころにダークな部分もあり、よりムーミンの世界観に魅了されてしまいました。
そして飛行おにというジェントルマンに出逢わせてくれて多大なる感謝です…
すっかりムーミンにはまり込んでしまい、全九巻の文庫本限定セットを購入し、いそいそとムーミングッズを収集している毎日を送っています。
みなさんもムーミンの世界の戸をぜひ叩いてみてください!