推し紹介

【舟を編む】大好きなチャラ男、彼の抱える苦悩に共感の嵐。

舟を編む:西岡正志
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とんこ
とんこ
こんな同僚が欲しいナンバーワン!

作品について。

今回紹介するのは三浦しをんさんの舟を編む。2012年本屋大賞受賞作です。

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本作品は映画化にアニメ化と続々と映像化されており、三浦しをんさんの代表作として紹介されることも多いかと思います。

三浦しをんさんの作品は初めましてです。

僕は同じ三浦姓である、三浦綾子さんが小学生の頃から好きで、当時はブックオフに通って必死に買っては読んでを繰り返していました。

ブックオフに行くと必ず三浦綾子さんの隣にいる三浦しをんさん。
名前だけは存じておりいつか読もうと思って過ごしていたらもうこんな年齢になってしまいました。

読了後の感想としては、「あーあ、もっと早く読めばよかった!!!!」です。

舞台は出版社。言葉のセンスを買われて辞書編集部に異動してきた主人公の馬締光也が新しい辞書『大渡海』の完成に尽力する物語となっております。

登場してすぐ、好きになる予感がした。

今回の推しはいつもとは違います!
普段は女性がメインとなる推しですが、今回は男性の推しの紹介となります。

今回紹介する推しは西岡正志です。
まずは彼の性格を表しているシーンをご覧ください。

「まじめはさあ、彼女いる?」
 西岡は、恋愛の話をすれば、ひとと親しくなれると思っている節がある。荒木は黙って、奥まった机から馬締の反応をうかがった。
「いいえ」
「じゃ、合コンしよう。セッティングするから、ケータイの番号とアドレス教えろよ」
「持ってないです。営業部で使っていたものは、会社に返してしまったので」
「なんで!?」
 西岡は立ち歩くミイラを目撃したような表情になった。「彼女ほしくないのか?」
「さあ。彼女も携帯電話も、ほしいのかどうか考えてみたことがありません」
 西岡が助けを求める視線を寄越したので、荒木は噴きだしそうだったのをこらえ、威厳を持って場をとりなした。

はい、正真正銘チャラ男ですね。
僕はこういう明るい性格大好きです!!!!一日に十回呑みに行きたい!!!!!!

そして、こういう明るい性格の人は悩みなんて一つもないんだろうなうらやまし〜と思っている部分があります。

ですが彼は違いました。一見悩みとは無縁の存在のように思えますが、僕と同じような、いやみんなと同じような苦悩を抱えていました。
彼は物語の最初から辞書編集部に在籍していますが、主人公・馬締の異動によって肩身狭い思いをします。

そんな馬締さんと自分自身を比べてこぼれた心情が僕は共感しかできなかったのでご紹介させてください。

 俺はただ、まじめに勝ちたかったんだ。もし香具矢ちゃんが俺を選んでくれたら、この劣等感も少しは薄らぐんじゃないかと、ばかげた夢想をした。そんな事態を本気で信じていたわけでも、実現するために全力でアプローチしようと思ったわけでもないけれど。
 西岡にもプライドはある。何に対してもさして入れ込めず、無難に仕事をこなすもはかばかしい評価は得られず、常に他人と能力を比べてはあせっている。そういう卑屈な自分を、だれにも知られたくなかった。
 西岡の情けなくだらしない部分を見つくしてきた、麗美にさえも。
 役にも立たないプライドばかり肥大してっから、俺は「なりふりかまわず」ってのができないのかもしれないけどな。

仕事・辞書への想いや成果では勝てない主人公・馬締に、自分の得意分野の恋愛でも劣等感を抱いている西岡くんの心情の吐露…!

本作の登場人物はみな、何か一つ自分が情熱をささげられるものを持っています。
そんな中、特別情熱を注げるようなものを持っていない西岡くん。

やはり世の中の大多数は凡人なわけで、この西岡くんの立ち位置だったり気持ちだったりは多くの人が共感できるのではないかと思いました。

僕もそんな中の一人!!!!!!!!!

一つのことに熱心になって素晴らしい成果を上げている友人や同僚を横目に自分はなんてダメな人間なんだろう…と途方に暮れることもありました。

「〇〇が得意だよね」「××と言えば!だよね」
僕もきっとそんなタグが欲しいのかもしれない。ただ、周りのすごい人と比べたら自分につけられるタグがもう残っていない。

本作での西岡くんの立ち位置は決して他人事ではなく、そんな中でもがき頑張ろうとする彼に勇気をもらいました。

とんこ
とんこ
好きだ、西岡…!

てるる
てるる
今回ばかりは同意

凡人の苦悩の末、出した答えとは。

そんな西岡くんも自分なりの答えを出します。

 俺は名よりも実を取ろう、と。
 荒木はしばしば、「辞書はチームワークの結晶だ」と言う。その意味が、いまになって本当にわかった。
 教授のように、いいかげんな仕事をして辞書に形だけ名を刻むのではなく、俺はどの部署へ行っても、『大渡海』編纂のために全力で尽くそう。名前など残らなくていい。編集部に在籍した痕跡すら消え去って、「西岡さん? そういえば、そんなひともいましたっけ」と馬締にいわれるとしても、かまわない。
 大切なのは、いい辞書ができあがることだ。全てを賭けて辞書を作ろうとするひとたちを、会社の同僚として、渾身の力でサポートできるかどうかだ。
 西岡は階段を下り、研究棟から出た。冬の午後の淡く白い光が、キャンパスに差している。葉を落としたイチョウの枝が、空にひび割れを作っている。
 だれかの情熱に、情熱で応えること。
 西岡がこれまで気恥ずかしくて避けてきたことは、「そうしよう」と決めてしまえば、案外気楽で胸躍る思いをもたらした。

彼のこの決意、正直目頭が熱くなりました。

いやいや!!!!カッコ良すぎるやろ!!!!!!!!
一晩でいいから抱いてください!!!!!!!

自身の劣等感とかいろんな負の感情を認めた上で、ダッセェと思ってたことを全力でやってやる!そんな固い決意には心動かされました。

そして物語の最後のシーン、こちらを見てほしい。

「『大渡海』のあとがきに、俺の名前が載ってるじゃないか」
「はい」
「あれを書いたの、まじめだろ」
「松本先生は入院なさっていましたから、俺が代筆しました。もちろん、内容については先生に相談し、ご意向をうかがったうえで」
 西岡もかつて辞書編集部に在籍し、『大渡海』編纂に尽力したのだから、名前を載せるのは当然だ。感激の理由がわからず、馬締は首をかしげた。
「まさか、お名前に誤植でもありましたか」
「そうじゃない。俺なんか、ほとんどなにも……」
 言いかけ、西岡は苦笑した。「本当に、おまえってやつはさあ」
 馬締の背中を軽く叩き、西岡は再び人混みのなかへ戻っていった。小さく「ありがとう」と言われた気がしたが、聞きちがいかもしれない。

……

報われてよかった!!!!!!!!!!!!

正直、馬締さんの性格的にしっかりやってくれるだろ!と予測はしていました。
彼なら…という信頼です…!それくらい馬締さんも素敵な人柄なんです。

ですが、西岡くんなりに自分の道を決めて尽力し、しっかりと結果として残せた。
これはやはり嬉しい結末でしたね。

終わりに。

西岡くん大好きっすわ、ほんと!

後半パートではあまり出番のない西岡くんでしたが、ずーっとまだ出ないかな?そろそろ出番かな?とそわそわと読み進めていました。

ここまで読んだみなさんならわかるかと思いますが、チャラい見た目や言動と、真面目な性格のギャップもいいですよね。
私だけではなく、西岡くんファンが結構多いんじゃないかなぁと思います。

前半パートの凡人枠は西岡くんで、後半パートの凡人枠はまた別の人という構成となっています。
凡人の苦悩とか嫉妬、焦燥に自己嫌悪…共感の多いキャラだったなぁと感じました。

凡人なりに、自分なりに…何ができるかを改めて見つめ直したいと思います…

今回文庫本を購入して読みましたが、単行本の装丁が印象的な方も多いのではないかと思います。僕は単行本も購入する予定です…!

映画やアニメなど、まだまだ楽しめそうなので、順番に楽しんでいくかーとワクワクしています!

活字が苦手な方はアニメや映画から入ってみるのもいいかもしれませんね。
気になった方は是非書籍も手に取ってみてください!

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とんこ
本の感想や意見を書くのは苦手ですが、好きになった登場人物について語るのが大好きです。 元気に推しを布教していきます。